−自分の足で材料を探し、デザインして、営業もする。一連のものづくりを通して、坂井さんが特に大事にされてきたことはありますか
1人でなんでもやることは、やる気になれば誰でもできることだと思うんです。でもそのときの覚悟が大事かなと。自分は「絶対失敗しないぞ」と言い聞かせていました。自分でお金を出す以上は失敗できないと、そういう思いでやってきたので、一段一段、階段を踏みしめながら歩いてきたという感じです。
あとは、「どうやったら残れるか」を考えたときに、結局、地道な努力しかなくて、手間や時間のかかることをしっかり積み上げていくことなんだなと。ファッション業界は、コピーも多い世界ですが、誰も真似できないオリジナルがあれば、コピーされることも少なくなりますしね。
−これからの展望をお聞かせください
バトンをつないでいくことをやっていかないといけないと思っています。それは、これからの自分のテーマでもあります。新しくMICAIを作ったのも、それが大きな理由でした。ある程度トップダウンでない動きの中で、スタッフにはものづくりをしていってもらいたいし、それをまた違う売り方で売ってもらう。そんな新しいスタイルができたら。急激に変わることはしたくないので、今あるヒューマンリソースを含め、実際やってきたことをさらにバージョンアップする、次のステージでやっていくことを目指せたらと思っています。
ユーザーに「投資する価値がある日本のバッグと言ったらトフだよね」といってもらえるような安心できるブランド。「ここのだったら間違いない」と母から娘にバトンを渡してもらえるようなブランドになれたらと思っています。世代は変わっても残る、それが本当の意味でのブランディングだと思いますので。
−バトンを渡した以降も持続可能なブランドであり続けて欲しいという思いが感じられます。
そうですね。靴の歴史に比べるとバッグの歴史というのは全然新しいんです。世界のブランド見たときに、オリジナルの真鍮金具でこだわりを持ってやり続けているブランドというのはたぶんどこもない。そういう意味でも、“安心”と並列して、“革新”というのも当然必要な要素になってくる。といっても奇抜なことでなく、ずっと「特別な普通」であり続けたい。これからもそういうバックブランドでありたいと思ってます。