08 シネマコラム Cinema Column

〈TOFF&LOADSTONE〉のデザインにおけるインスピレーションソースの一つに映画がある。
今回はデザイナー坂井一成が影響を受けた作品や女優・俳優陣をご紹介する。

オードリー・ヘプバーン

坂井の映画の記憶を辿ると、幼少期、母親が観ていた欧米の作品が原点となる。幼い頃、実際に目にしていた原風景と映画で観た世界は、今も混ざったままだと語る。

「映画は、今のものづくりのベースになっています。幼少期、ストーリーはわからなくとも、おそらく子供なりに感じるものがあったのでしょう。母がよく観ていたソフィア・ローレンの作品では、『島の女』('57・監督シーン・ネグレスコ)など。そこそこ大きくなってからだと、マルチェロ・マストロヤンニと出ていた映画が印象的でしたね。イタリア映画の名作『ひまわり』('70・監督ヴィットリオ・デ・シーカ)にはかなり影響を受けました」

欧米の映画を観ながら多感な時期を過ごした坂井は、影響を受けた女優の一人にオードリー・ヘプバーンを挙げる。

「ファッションの視点でもよく観ていました。彼女の衣装はずっとジバンシィでしたからね。『シャレード』('63・監督スタンリー・ドーネン)は、冒頭スキー場でのシーンで着ていた、茶色のミンクのプルオーバーや大きなサングラス、『ティファニーで朝食を』('61・監督ブレイク・エドワーズ)のドレスも印象に残っていて、今見てもとてもおしゃれなんですよね。『ティファニーで朝食を』の相手役ジョージ・ペパードのツイードジャケットと、白シャツに黒ネクタイというシンプルなんだけどスッキリした着こなしもすごく格好いいなと思いました。オードリーの作品の中でも好きなのは『いつも2人で』('67・監督スタンリー・ドーネン)。1954年から1966年の12年間の1組の夫婦の軌跡を追ったもので、3時代を描いています。それぞれの時代を表す衣装もいい。パコラバンヌのドレスも出てきます。ヘンリー・マンシーニの音楽も素晴らしかった。オードリーの映画はどれもエレガントで、今観てもまったく古くありません」

フランスの女優アヌーク・エーメもまた、大きく影響を受けた一人。〈TOFF&LOADSTONE〉の2020年春夏コレクションの新作には、「アヌーク」と冠したバッグもある。

「何と言っても『男と女』('66・監督クロード・ルルーシュ)ですね。僕が作ったようなバッグを劇中で持っていたわけではないのですが、彼女には絶対的な美しさと品がある。そんな方に向けたものを作りたいですし、そういった品の良さをどのバッグにも落とし込みたいと思っています」

オードリーとアヌークは、坂井にとっての永遠のミューズでもある。2人に共通するのは、圧倒的な美しさを持ちながらも媚びることなく、中性的で凛とした魅力があるところ。他に影響を受けた作品では、フェデリコ・フェリーニの中でベスト3に入るという、ジュリエッタ・マシーナ主演の『魂のジュリエッタ』('64・監督フェデリコ・フェリーニ)、今とまったく変わらないパリのメトロの風景が楽しめる『地下鉄のザジ』('60・監督ルイ・マル)、ゴダールのミューズ、アンナ・カリーナの『気狂いピエロ』(’65・監督ジャン=リュック・ゴダール)など、ファッションと映像美に魅了された作品が多い。一方、メンズファッションで言えば、『太陽がいっぱい』('60・監督ルネ・クレマン)だ。

「特にアラン・ドロンとモーリス・ロネの身のこなしは良かった。貧しい役のドロンが、金持ち役のロネの留守宅に行くシーンがあって、その時にドロンが、ロネのクローゼットにあるブルーのシャツを着て、白のコットンパンツと真っ白の靴を履く。そのさりげない着こなしがとってもかっこいいんです」

アラン・ドロン
ショーン・コネリー

絶対的なヒーローでいえば『007』シリーズのジェームズ・ボンド。歴代の中でもショーン・コネリーが一番いい。『ロング・グッドバイ』(‘73年・監督ロバート・アルトマン)でのエリオット・グールド演じるフィリップ・マーロの友人が乗っていたデイトナ、『グラン・ブルー』(‘88年・監督リュック・ベッソン)の冒頭でジャン・レノが着ていた水着、『さらば青春の光』('79・監督フランク・ロッダム)に出てきたモッズコートやランブレッタ。これらの作品には、自分を投影してファッション小物や、バイクや車まで影響を受けた。

今もすべてを覚えているわけではないが、ファッションのディテールはかなり記憶にある。ものづくりにおいては、自身がインスパイアされたものを、新しく生まれるものにつなげていきたいと考える。古いものや昔のものをアーカイブから引き出し、いかに現代とつなげるか。

「この時代のフィルムの質感、色の使い方や手法も素晴らしいので、我々がこういった作品群の語り部となって残していかねばならないと感じています。TOFFで言えば、真鍮をもっと世の中に残していきたいですね。それこそが伝承していきたいもの。私自身は古き良き時代の映画にあったものにインスパイアされてデザインすることが多いですが、そこに今でしか作れない素材などを組み合わせて、いかにクラシックにするか。その辺の落とし込み、バランスの取り方は、うまく現代に合わせてモディファイしていきたいと思っています」

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